麗しき南の島 台湾
熱い選挙戦には悲しい歴史があった

 濃い緑に覆われた美しい島、台湾。この島を最初に見たポルトガル人は「美しい」を意味するポルトガル語、「フォルモサ」と呼んだが上陸しなかった。今もヨーロッパの年配の人々は台湾をフォルモサと言う。そしてオランダは明朝と戦争し、1624年台湾はオランダ領に。これを取り戻したのが1662年清朝時代、日本でも「国姓爺合戦」で知られる鄭成功だ。そして日中戦争で1895年に日本の植民地となり、日本敗戦の19454年に中華民国として建国された。ちなみに第二次大戦中、真珠湾攻撃の開戦の合図「ニイタカヤマニノボレ」は、台東にある標高3900mの玉山を指す。

親日台湾の内なる民族間抗争と悲劇
 戦争という忌まわしい歴史が日台間にあるが、台湾の人々は親日的だ。日本の作った新幹線、日本の作った世界第2位の超高層ビルである「台北101タワー」やそのエレベーターが5階から展望台のある89階までの382メートルを37秒で登り切ることを自慢し、日本車のシェアは7割を占める。道が分からず困っている人あらば、そこまで連れてゆくという人情厚き国民性だ。


龍虎塔(高雄)
龍の口から虎の口の中へ入れば、物語や壁画があり、塔へ登れば絶景が。

 今年1月、台湾旅行の一員となって特急列車に乗った。旧正月が目前の台湾は、ふるさとを目指す人たちが大荷物を抱え、北から南へ、南から北へ大移動していた。南から東海岸沿いに北へ向かう同じ列車に乗り合わせたおばちゃんも大荷物。私たち一団の車両で立ちんぼしていた。途中、車内の日本人乗客全員に栗またはプラムのようなものの皮をむいて食べろと勧めてくれる、「ヤマ」といいながら手渡してくれるのだ。何という意味だったのだろうか。すれ違ったこの国の素朴な人情は温かかった。 


太魯閣峽谷(花蓮)
インディアンに似た大理石の峽谷

 台湾の人口は2300 万人。400年前から住む本省人、戦後の日本軍撤収後の統治を任された蒋介石と共に渡ってきた外省人、また黄河上流から戦争を避けて南下してきた広東省出身の人たちは、客家人と言われる。このほか50万人の先住民族の人たちも。終戦時、台湾に住んでいた人々は、台湾語、客家語、日本語しかしゃべらなかったが、戦後はこれに北京語が加わり、1960年以後は北京語が共通語に。台湾テレビには今も北京語の字幕スーパーがついている。「日本はいいですね、言語が1つだけで」とは台湾の人の率直な感想。


原住民アミ族の踊り(花蓮)

 訪問時、大統領選挙が展開されていたが、本省人は中国からの独立派、民進党を支持し、外省人は統一派の国民党を支持する傾向が強かった。台湾の選挙は熱い。この熱さの裏には二・二八事件という台湾の悲しい歴史がある。

切ない「君が代」と二・二八事件の虐殺
 戦後、国連軍の意を受けて日本軍の武装解除を行うために蒋介石の国民党政府が行政を引き継いだ。当初は少なからず台湾で歓迎された国民党政府だったが、やがて台湾人の間には腐敗の凄まじさへの驚きと失望が広がった。1947年2月28日に台北市で闇タバコを売っていた本省人女性に、取締りの役人が暴行する事件が起こり、本省人は市庁舎への抗議デモを行ったが、憲兵隊が発砲し抗争は台湾全土に拡大。国民党政府は武力で徹底的に弾圧した。本省人は日本語や台湾語に答えられない者を外省人と認める手段をとった。台湾人の中にも日本語が話せない人がいたが、「君が代」は「国歌」として全ての台湾人が歌えたため、本省人は共通の合言葉として「君が代」を歌い、歌えない者を外省人とみなしたというエピソードは日本人としては心苦しいものがある。
 一方、外省人側は本省人がしゃべれない北京語を踏み絵としたという。この事件で、約2万8000人の本省人が殺害処刑された。この事件の際に発令された戒厳令は40年後の1987年まで継続。戒厳令が解除された後も、国家安全法によって言論の自由が統制され、「民主化」が実現するのは、李登輝総統が1992年に刑法を改正し、言論の自由が認められてからのこと。
 封印された歴史の扉を開けたのは、1989年に公開された候孝賢監督の台湾映画「悲情城市」だった。二・二八事件の中を生きた庶民の暮らしをもの静かに淡々と描き、ヴェネツィア国際映画祭で金賞を受賞。台湾映画の国際的評価を高めた。この映画に出てくる舞台、九份は映画「千と千尋の神隠し」のイメージを宮崎駿監督に着想させた場所としても知られており、同映画のルーツを探る場所としても非常に興味深い。


「千と千尋の神隠し」はこの地で着想された(九份)

 日本からわずか3時間少し、昔見たような懐かしい風景もあり、豊富な果物、日本人好みの中華料理など台湾は穏やかに佇む。アジアの穴場ともいうべき台湾へ友好の旅を。

 


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