深刻な汚染水問題
福島原発「事故収束」宣言の罪は重い


水素爆発の建屋内部

 
 福島第一原子力発電所の汚染水問題が大変深刻な事態を迎えている。
2020年東京オリンピック招致の中で国際的に注目を浴び、そして再び地元漁民は悲鳴をあげている。政府は一昨年12月早々と福島原発事故の収束宣言を発したが、今になってクローズアップされた汚染水問題。一体現場では何が起こっているのか、9月5日超党派の議連「原発ゼロの会」で視察に入った。

 視察団には現・前職国会議員10名に加え有識者・事務局など総勢16名、私も前衆議院議員として参加した。汚染水をためるタンクや地下貯水槽から汚染水が漏れていることは東電は早くから知っていた。もちろんその情報は経産省資源エネルギー庁にも伝わっていた。しかし、東電が汚染水の海洋流出を初めて公式に認めたのは、なんと参議院選挙の翌日7月22日だった。それ自身がうさんくさいものを感じさせる。
 8月8日の朝日新聞のトップには、「東電任せ対策破綻」として「汚染水 海に
1日300トン」というショッキングな記事が踊った。地下水が汚染水に大量に流れ込み、膨大な汚染水が発生し、かつ海洋に流出し続けているという深刻な事態が明らかになったのだ。福島第一原発発電所には阿武隈山系から毎日1000トンの地下水が流れてきているという。このうち300トンは汚染水と混ざらずに、真水のまま海に流れているが、残りの700トンは何らかのかたちで汚染水と混ざっていると考えられている。そのうち400トンが原子炉建屋に流入して
汚染水として溜まり続けており、残りの300トンは汚染水や汚染土壌と混ざりながら新たな汚染水となって海に流出していると見られているのだ。現段階で原子炉建屋への地下水の流入を防ぐこともできず、かつ海への汚染水の流出も防ぐことができていないという、深刻な事態だ。
 しかもそれを防止する工事や対策は遅れに遅れている。国は一昨年の12月16日の収束宣言に伴い統合対策本部を解散した。原子力規制委員会も今や再稼働の技術審査に全力を傾けている状況だ。この危機感のなさ、国としての怠慢、無責任さが今日の深刻な事態を招いている。一方当事者の東京電力は、当初計画されていた発電所を囲む遮水壁の工事を、巨額なコストによる経営破綻を恐れネグレクトしてきた経過がある。国、東電ともにどちらが、誰が責任をとるのかがわからない無責任体制だ。

 私たちは去る9月5日朝Jヴィレッジで防護服に着替えバスで移動、発電所に入り免震重要棟で更に別の防護服に着替え、乾式キャスク仮保管設備、帯留水処理施設や多核種除去設備、地下水バイパス揚水井戸、漏洩したタンク群の現場、1〜4号建屋の外観、海側の遮水壁建設現場などを視察した。現場の線量は総じて100マイクロSv/h以下だったが、1〜2号建屋の海側で我々が乗ったバスのなかで900マイクロSv/hを超える非常に高い線量に跳ね上がったのには驚いた。
 今回水漏れを起こしているタンクは欠陥品だ。フランジ型と言って本体のフランジ部分にゴムパッキンを入れボルトで締め付ける構造になっており、製造メーカーの保証期間は最初から5年という。しかも現実にはまだ2年しか経っていないのに300tの高濃度汚染水漏れが発生し、その付近では1800ミリシー
ベルトというとんでもない高線量の汚染箇所が。このタイプのタンクが300基設置されており、フル溶接型のタンクの増設を急いでいる。しかし溶接型のタンクとて万全ではない。タンク間をつなぐ配管の継ぎ目部からの漏洩も確認された。東電は見回り点検体制を強化しているという説明であったが、今後タンクや配管の劣化も進み、相次ぐ汚染水漏れが予想されるのだ。原子力規制委員会はこの事故を受けてレベル3の重大事故と認定した。レベル7の事故現場でさらにレベル3の事故が上塗りされるという異常事態となったのである。


汚染水タンク

安倍首相の完全コントロールの嘘

 対策の現場も視察したが、どれもこれももぐら叩きの様相だ。原子炉建屋に地下水が流入してこないための凍土壁の建設の説明も受けたが、もともとどれだけの遮水効果があるのか信頼性に疑問があるだけでなく、流入し続ける水が行き場を失って壁を乗り越えてこないのかという問題もある。一方で地下水が建屋に入る前に井戸でくみ上げて海に流すバイパス工事の説明もあった。建屋への400トンの流入を100トン減らすことができると言うのだが、専門家は地下水をくみ上げることによる地盤沈下を心配する声も。海岸では鋼管矢板を埋めて遮水壁をつくる工事が進められているが、完成にはまだ1年以上かかる。
 東電は漏れた汚染水がトレンチから海へ流出したことは仕方なく認めたが、地下水と混ざった汚染水の海への流出については明確にしなかった。しかしそもそも多くの人が疑問に思うのは、福島原発の事故からすでに2年半、原子炉建屋の流れ落ちた燃料の状態がどうなっているのか分からない、建屋下部のコンクリートや配管の状態がどうなっているかわかない、しかも地下水脈がどうなっているのかわからない状況で、実は事故直後からずっと海洋への流出が続いていたのではないかという点である。
 国会は、オリンピック招致への影響を考えて汚染水の国会審議を先送りにしてしまった。なんたる国会の劣化・責任放棄ではなかろうか。安倍首相は、福島から東京は離れているから大丈夫だと言い福島県民の怒りをかった。国際舞台で汚染水問題は「アンダーコントロール」と真っ赤な嘘を言い、さすがに東電は即時否定せざるを得なかった。0.3平方キロの港湾内には毎日300トンの汚染水が流れ込み、港湾内の水は一日で半分は外水と入れ替わるという。フェンスは取り付けられているが、外洋と遮断されているわけではない。外洋に流れ出た汚染水は薄まりながらも約2年で太平洋を一周すると言われている。韓国は東北や関東8県の水産物の禁輸に踏み切ったが、この問題が日本の国内の問題ではなく、国際的な深刻な問題だという認識をまず持つのは当然だ。私はこのような状況下での東京オリンピックには反対である。しかし政府がオリンピックを受け入れた以上、汚染水対策は第1級の国際公約となった。東電の破綻処理の可能性も含めて今後の政府としての真剣な対策が問われている。


筆者の前衆議院議員・服部良一氏


 


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